一音入魂

音楽の教えとしての、「一音入魂」というのは、
実に大事な教えだなあと思いまして。
最近ようやく理解できてきました。前まで単なるお題目だと思っていましたが。

声楽でも器楽でもどちらでも言えることですが、
わかりやすいので器楽を例にしますと、
楽器屋で、「この楽器の音はどんなんかなー」と思って鳴らしたときの一音って、
すごくテンションがあがるじゃないですか。「おおっ」と思うし。
その一音が、すでに十分な音楽的美しさを備えている。
「どう頑張ってもきれいな音が出ない楽器」ならともかく、
1回でもきれいな音が出るのであれば、単純に考えて、
それを積み重ねていくだけでもずいぶんとよい音楽になると思うんです。

だんだん楽器に慣れてくると、ひとつひとつの音が、
そんなに頑張らなくても出せるようになります。
慣れるとはそういうことですから。
しかし、ひとつひとつの音がだんだん雑になってくる、
というのも、また慣れることの弊害でもあります。
もちろん一流の音楽家は、慣れてもひとつひとつの音の説得力がものすごいですが、
我々(我々?)みたいな二流の音楽家は、慣れた演奏をしようとすると、
ついひとつひとつの音がいい加減になってしまう。
鳴らそうと思えばいい音を鳴らすことはできるんですけどね。
初心者はまず、いい音を1回ちゃんと鳴らせるところに
到達しなければならない。そこへの道のりも結構むずかしいんですが。

僕が「一音入魂」はまったくもって正しい、と思ったのは、
いくつかの根拠があります。

きっかけはたぶん、タブラ奏者のu-zhaanさんがtwitter上で、
ザキール・フセイン氏のことを「一音出すだけで、なんであんなにかっこいいんだろう」と
言っていたことだと思われます。
ザキ―ル・フセイン氏というのは世界ナンバー1のタブラ奏者なんですが、
そのレベルになってくると、ひとつの音自体がカッコいいらしい。
プロ奏者のu-zhaanさんが言っているのだから、なおさら間違いない。

となると、どうやら、「速くて複雑なフレーズを弾かなくてもカッコいいものはカッコいい」
んじゃないだろうか、と。そんなことを思い始めました。

で、もう一個の原因が、ムリダンガムという、これまたインドの太鼓なんですが、
それのレッスン動画をYoutubeで見ていたときに気づいたことです。
先生の人が、「とにかく、できるだけゆっくりなテンポから始めなさい」という、
意外な言葉を発していました。「そうすれば、ひとつひとつの叩き方が丁寧になる」
「速さについては心配するな、練習していればそのうち速くなる」とも。

で、実際とてもゆっくりと基礎フレーズを練習してみたところ、
まったく新しい発見がありました。まず、自分の叩き方がいかにいい加減であったか。
そして、実際練習を続けてみたら、ちょっと速くなってもぜんぜん平気であるということ。
基礎フレーズをゆっくりなテンポで何回も演奏することによって、
だんだんと、「飽きてくる」んですね。で、飽きてくると速くしたくなる。
が、速いテンポに進むのはいいけれども、果たしてちゃんと叩けているのか。
その点に着目しながら練習を続けていくと、
「このテンポでは完全にきっちり叩くことができる」というレベルに到達する。
そうなったときに、本当の意味で「飽きた」といえて、
次の速さに移っても、叩き方がいい加減にならないんです。
音のきれいさを保持したまま、テンポが速くなる。

打楽器のリズムの「ノリのよさ」「グルーヴ感」というのは、
テンポを速くすれば正直だいたいノリがよくなります。そればっかりではないんですが。
だから、実はグルーヴ感を作ること自体はむずかしくなくて、
むしろ難しいのは、「ゆっくりなテンポでノリをつくること」なのかなと。
それをつかむためにも、ゆっくりなテンポから始めること、すなわち、
一音入魂することが、大事なんじゃないだろうかと。

で、たぶんこれは音楽以外のいろんなことにも応用できる話で、
そういう意味でも一音入魂というのは、いい言葉だなあと、思います。
よい音楽生活を。

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