両替おじさん問題

前回の記事「固定相場制について考える」の続き。
読んでない人はまずそちらを読んでください。

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前回の要約。

1ドル=100円の世界。
iPhoneが1台5万円、Wiiが1台2万円。
iPhoneを買いたい日本人は5万円を支払い、
それが500ドルになってアップルのところへ行く。
Wiiを買うアメリカ人の200ドルは2万円で任天堂へ。

その途中にはさまっている両替おじさん。
両替おじさんの所持金が10万円と1000ドルの場合、
iPhoneが2台売れてWiiが5台売れる状況だと、
ちょうど両替の総額が、
「10万円→1000ドル」と「1000ドル→10万円」で均衡状態。
この場合おじさんはまったく困らない。

じゃあ、iPhoneが5台売れてWiiが5台売れる状況だと、
両替要求はそれぞれ
「25万円→2500ドル」と「1000ドル→10万円」なので、
おじさんの手持ちが1000ドルではこの両替要求を
満たすことができない、という話でした。さあどうする。

もっとも簡単な解決策としては、
「両替おじさんがお金を借りる」というのがある。
両替おじさん以外にもお金を持っている人はいっぱいいるわけで、
たとえば日本人とアメリカ人の資産家を1人ずつ呼んで、
それぞれに1000万円と10万ドルを貸してもらえばいい。
そうすれば、たとえiPhoneが100台売れたところで、おじさんは困らない。

しかし、そもそも両替おじさんに1000万円貸す奴がいるのか?
というより、その日本人とアメリカ人の資産家がタッグを組めば、
10万円と1000ドルなんてはした金しか持っていない両替おじさんより、
はるかに強力で安定した両替会社ができるんじゃないか?

こうして、スティーブ(仮名)と中村(仮名)はタッグを組んで
「両替&Co,」を設立した。
両替業務を安全にこなすには、大量の預金が必要なので、
必然的にこういった資産家が両替おじさんにとって代わる。

しかし、お金をただ持っているだけでは勿体ないので、
こういう会社はふつう銀行業務も手掛けることになる。
とはいえ、外貨両替専門店みたいなものもあるけどね。
そういう場合、手数料とかで稼ぐことになる。
小額の資産しか持たず、また手数料もとらない「両替おじさん」というのは
おとぎ話の世界の人になる。実際これはおとぎ話ですが。

さて、そのようにして「両替&Co.」が誕生しても、
やっぱり問題は発生する。
仮に「両替&Co.」の準備金が100億円と1億ドルだったとしても、
やっぱりiPhoneとWiiの売り上げのバランスがおかしいと、
いずれは無理が出てくる。

たとえば、極端な状況をとして、
iPhoneが10万台売れるけど、Wiiは50台しか売れない状況を考えてみよう。
この場合、両替要求は「50億円→5000万ドル」と「1万ドル→100万円」で、
この取引をすませたあとの準備金は
149億4900万円と5001万ドルになる。
やっぱり不均衡が生じていて、
このままだとやがてドルが底を尽きてしまう。
両替おじさんが両替&Co.に変わっても、
問題はそのままだ。

こっからどうしたらいいのかが、
正直いくら考えてもわからない。
どうがんばってもドルが不足するような気がする。

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ドルが不足するとはどういうことか?
ドルを買いたい人がいっぱいいるということだ。

つまり、ドルの需要が供給を追い越している状態になる。
ドルの売り手よりも買い手が多い。

と、なると、ドルが売り切れてしまった場合、
なんとかギリギリで駆け込んでドルを買えた人は、
そのドルを100円以上で売っても売れるんじゃないか?
だって買いたい人はほかにいるわけで、
その人らの中には200円出してドルを買ってもいいと思っている人が
いるかもしれない。となるとドルを高く売ることができる。

という風にすると、変動相場制が誕生する。
変動相場制は自然のなりゆきでできてしまう。

となると、固定相場制のほうがむしろ不自然な制度なんじゃないか?

実際そらそうだ。
たとえば、パンは1個100円と物価統制されている世界を考えてみたら、
今の私たちからするとすごく不自然な制度だ。
物価統制令はまったく成立しないわけじゃないけど、
でもいろいろと社会に不便をもたらす場合もある。
日本の戦後に出た物価統制令のもとでは、食料や物資が不足して、
ヤミ市での取引が公然と行われていたのは有名な事実だ。

ちなみに、いまでも物価統制令の名残が少しだけ残っている。
どういうわけかお風呂の入浴料金だけは規制がかかっているのだ。
とはいっても、いわゆる昔ながらの「銭湯」がその対象で、
「スーパー銭湯」は対象外になっている。なぜか。

固定相場制というのは、貨幣の物価統制令のことで、
物価統制令がうまくいく場合もないことはない。
実際、今も世界のあちこちで、固定相場制(に近いもの)が
使われていて、調べていくと少し意外な感じを受ける。

香港ドルは、ドルとの値段関係を一定範囲で固定していて、
1US$=7.75〜7.85HK$という風に決まっている。
こういうのを「ドルペッグ制」という。
とりわけアメリカと経済的に縁が深いところでは使われる。

ほかにも「通貨バスケット制」「カレンシーボード制」といった、
純粋な固定相場制とは少し違った制度もいまだに存続していて、
通貨バスケット制はロシア、マレーシア、シンガポールが用いている。
固定相場制というのは、すっかり過去の遺物だと思っていたが、
どうやらそうでもないらしい。

という風に考えると、さっきの両替おじさん問題は、
なんらかの解決する方法があるんだと思う。
ただ、私にはそれがわからない。
たぶん両替おじさんだけを考えているからであって、
国の介入ということを考えていないからだ。
実際、固定相場制というのは、国の協力がないと成り立たないし、
国が両替業者に「1ドル=100円で交換しなさい!」と命令する制度でもあるからだ。

さっきまで、アップル、任天堂、両替おじさん(スティーブ&中村の両替&Co.)、
日本人、アメリカ人の5つのプレイヤーしか考えていなかったけれど、
ここに「日本政府」と「アメリカ政府」を入れてみたらまた話が変わってくる。

これ以上のところは、今のところ私に知識とアイディアが足りないので書けないけど、
もうちょっと為替にくわしくなったらまた書こうかと思う。
それにしても、経済を1から考えるのはけっこう難しい。

今なんとなくひらめいたけれど、
「貨幣の誕生」にまでさかのぼって固定相場制を説明すると
案外うまくいくかもしれない。また今度。

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