考え方を変えることについて

なんつうかモチベーションじゃねえんだよなあ。

モチベーションが上がればなんでもできるかっていうと、
やっぱそういう話でもねえというか、
力を入れるところを間違ってるんじゃないかと思うんです。

最近、楽器の練習をしながらTEDを見るというのに
ハマっておりまして、昨日も何本か見ました。
TEDは字幕ついてるから音は聴かなくていいのです。

で、昨日見たもののなかに、
サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか
ダニエル・ピンク 「やる気に関する驚きの科学」
という動画がありまして、
どちらもすばらしいプレゼンテーションです。
どちらもやる気・モチベーションに関する話で、
そういう方面に悩んでいる人にはおそらく助けになるでしょう。

けど、彼らの主張が正しいと思う上で言わせてもらうと、
やっぱりモチベーションじゃねえんだよなあ、という気がしていて。
少なくとも今自分が抱えている問題は、
モチベーションの問題じゃないんだよなあ、と。

ここで2冊の本を紹介しましょう。
1冊は精神科医のデビッド・バーンズが書いた
いやな気分よ、さようなら』。
もう1冊は心理学者のマーティン・セリグマンが書いた
Learned Optimism』。
(邦題は『オプティミストはなぜ成功するか』という
 すさまじくうさんくさいタイトルになっているのですが、
 セリグマンは楽観主義を手放しで賛美しているわけではない)

マーティン・セリグマンが、この本の中で、
人が何かをしようとする時、もっとも重要になってくる要素は3つある、
その3つとは、
「能力」
「意欲」
「楽観主義」
だ!という話をしています。

たとえば、モーツァルトのように、
能力があって、かつ作曲したいという意欲があっても、
「どうせたいした曲はできないだろう」と思っていたら曲は書けません。
曲を書かないのでせっかくの才能も磨かれません。

あるいは、
イケメンでちゃんと定職についていて、
彼女が欲しいという気持ちがあったとしても、
「でもどうせフラれるに違いない」と思っていたら、
彼女はできません。
告白されても、「幸せにできるはずがない」と思っていたら
フってしまうかもしれません。

少々極端なもの言いをしましたが、
セリグマンは、「楽観主義って案外大切なんじゃねえの?」という話をしています。
もちろん、それ以外のことも大事であると認めていますし、
彼はポジティブ・シンキングを提唱しているわけではないです。

で、この本の中に出てくる話でいうと、
たとえば保険の勧誘員のような、断られる回数の方が圧倒的に多い職業では、
実際に有能であるかどうか、意欲があるかどうか、ということよりも、
単にそいつが楽観的であるかどうか、という点の方が、
そいつの業績に及ぼす影響ははるかに大きい、という話をしています。
これは実際に実験してみて分かったことで、
実験の過程がくわしく書いてあるので読んでみてください。

でも、保険会社の管理職のような人間は、
多少悲観的であるべきではないか、という話もしています。

なぜこんなに口をすっぱくしてポジティブシンキングとの違いを言っているかというと、
やっぱり誤解されやすいからです。
本音を言うと「ああめんどくせえ」と思っています。
ビジネス書がこの世から全部消えたらこの話スッと書けるのに、と思っています。

で、
もう1冊の本、デビッド・バーンズの『いやな気分よ、さようなら』は、
どういう本かというと、軽いうつ病の人むけの本です。

精神的な問題の治療にはいくつも流派があって、
精神分析とか、薬物療法ですとか、いろいろあるんですが、
バーンズがやっているのは「認知療法」というものにあたります。
簡単に言うと「考え方を変える」ということですね。

うつ病の人って、ものすごく思考が偏った状態になっていて、
簡単に言えば「ある一つの見方から抜け出せない状態」になっています。
彼らの考え方はだいたい悲観的・自責的なものです。

で、そういった偏った状態から、
もう少し中立的というか、まともな考え方に移行できるようお手伝いするのが、
認知療法、というわけです。

ここで危険ワードが一個出てきました。
「まともな考え方」。
相対主義やポストモダン主義の人が見たら
血相を変えて批判する言葉です。

「どういう考え方をするかはその人の自由であり、
 それぞれの考え方に優劣などない!」
というのがよく言われることであり、僕もまあ基本これに賛同します。
基本は賛同しますが、でもやっぱり偏った考え方ってのはある。

「偏った考え方こそが、その人の個性なのでは?」
という意見もやっぱりありますし、僕もまあ基本これに賛同します。
基本は賛同しますが、でもやっぱ違う。

われわれの考え方って、確かにわれわれのものなんですが、
でも自分自身が選びとってそうなったわけじゃない。
肌の色や運動能力と同じぐらい、「そうなってしまったもの」です。
一見選びとってそうなったように見えますが、
でも実際にはいつの間にかそうなってしまっていた、
そう考えることを強制されているのが、我々の「考え方」です。

この「考え方の強制性」というのが、
ずっと昔から気になってるテーマですし、
今も一番気になっているテーマです。

―――――――――――――――――――――

さっきの3要素をもう1回書いてみましょう。

「能力」
「意欲」
「楽観主義」

この「楽観主義」は「認知」に置き換えても
あまり変わりはないと思います。
「認知」になると、たとえば
「人はこう行動すべきである」とかいった
信念・正義感のようなものも入ってきます。

「能力」
「意欲」
「認知」。

「能力」については、今やいろいろな手助けがあります。
たとえば機械、教育、協力などによって、
能力がない人でも能力を伸ばせたり、
あるいは能力があるかのようにふるまうこともできます。

「意欲」については、今まさに研究が進んでいるところです。
先ほどのTEDで紹介したようなスピーチによれば、
外的報酬がマイナスの効果を与えることがあるとか、
「なぜ」を理解して行動する時人はもっともモチベーションが高いとか、
そういう話が出てきています。たぶん彼らの主張はおおむね正しいのでしょう。

そして、「認知」についての研究が、
今もしかしたらもっとも遅れているのかもしれない、と思います。
もちろん心理学者たちは日夜実験と調査にいそしんでいますし、
新しい論文も出てきていますが、そんなにめぼしい話を聞いたことがない。
人の考え方がどういう風に決定されて、
どういうときに考え方が変わるのか、ということについて、
あんまりいい本を聞いたことがありません。
『いやな気分よ、さようなら』は、これにかなり近い本だと思いますが、
もっといろいろ出てきてほしい。
人はどういう時に自分の考え方を変えるのか、が知りたい。
それはたぶん心理学のうえに、哲学や経済学が乗っかった議論になるでしょう。

そして、もし我々が自分の考え方を自由自在に変えることができるようになれば、
もっと素晴らしい社会がやってくるんじゃないか、と思います。

ただ、そうなってきたときに問題になるのが、
アイデンティティの問題です。
実際、この問題があるから、認知の研究は進んでいないのではないか、
とすら思います。

われわれの「性格」って呼ばれるものって、要は考え方のことなんで、
その「考え方」を自由に行き来できるとなると、
つまり「性格」がいくつもある、ということになります。
そのような状態に我々は耐えうるのか、という話。

もっというと、我々は自分のアイデンティティを守るために、
「考え方を自由に変える」ということに対して反対するのではないか、という話。

これについては、なんというか、
「考え方が選択できる」という状態になればいいのではないかと思います。
「別の考え方に変身しようと思えばできる」というか。
うつ病の人って、うつになりたいからそうしてるわけじゃなくて、
本当は別の考え方をしたいんだけど、でも別の考え方になることができないから、
そういう苦しい状況に置かれているわけで。
この「考え方の壁」をいつでも自由に飛び越えることができたら、
うつ病とかもなくなると思いますし、
「頭でわかっちゃいるけど行動できない」みたいなことも
少なくなってくると思います。

ただ、そういう状態が何か人間として不気味である、
という意見もなんとなく理解はできるので、
もうちょっと違う姿になるのかもしれないと思います。

いずれにせよ、人が「意に沿わぬ考え方をさせられている」ときに、
いかにその考え方から別の考え方に導いてやれるのか、
ということです。良心的に。

実際、我々は日々の生活のなかで、
状況に応じてちょっとずつ考え方を変えたりしているので、
それをもうちょっとコントロールできるようにする、
みたいな感覚ですかね。

あ、そう考えると割と演劇に近いのかもしれません。
演劇知が必要になってくるのかもしれない。

とはいえ、単純に他人の考え方をマネするという話ではなく、
自分の考えで自分の考え方を批判するという話ですからね。
右手で右腕を殴るようなものです。関節をはずすような技がいります。

考え方を変えるのはむずかしい。
またいずれこのテーマで書きます。

もしかしたらヒントになるかもしれないのが、
「水平思考」というキーワードなんですが、
まだちゃんと水平思考の本を読んだことがないので発言は控えます。
まあでもポール・スローンのクイズ本は面白いので読んだ方がいいよ。
ではでは。

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