ザッカーバーグは二次元に住んでいる

はじめに言っておくと、
僕は全然ザッカ―バーグを批判するつもりではなくて、
(そもそも彼がどんな人物なのかよく知らない)
とりあえずSNSのシンボルとして
「ザッカ―バーグ」という人物を取り上げている。
twitterの創業者はジャック・ドーシーとエヴァン・ウィリアムズという
人らしいけど、全然聞いたことがない。

SNSというものを使い始めた誰もが行きあたる問題として、
「いったい自分はどのように発言すればよいのか?」
というのがある。

最初はある1グループの仲間だけだったかもしれない。
たとえばサークルの仲間だけとつながっていたかもしれない。
けど、やがてそのうち、仕事関係の人とか、
まったく違うつながりの人ともSNSではつながることになる。
へたをすると家族とつながることになる。
家族とSNSでつながることには、
僕はいまだに違和感があるのでやや否定的なのですが、
そのへんの理由はまたあとでくわしく説明します。

とりあえず、SNSに入っている以上、
いろんなグループ(今風に言うとクラスター)の人との
つながりが可視化される。
ふつう人間は1つのグループだけに所属していることはないので、
元来いろんなグループに属しているのだけれど、
それが一堂に会して、
かつ「まったく同じ私の近況」を見る、というシチュエーションは、
かなり奇妙である。

つまり、SNSという空間では、原則として、
「多用なふるまい」が許されない。
いちおうmixiやFacebookでも、設定によって公開する人を
選ぶことはできるけれど、それもなかなか面倒くさい。
多くの人は、一括で見せている。

このことが、だいぶ新しいコミュニケーションであると思うのです。
是非はとりあえず置いておくとして、だいぶ新しい。今まではありえなかった。
われわれは、ふつう顔の使い分けをしながら生きているのですが、
それが許されない。
結果としてSNS上で自分の近況を発信する人は、
3つの方法のいずれかを選択することになります。

1.「多様な人が見ている」ということを忘れる
2.誰が見てもあたりさわりのない形式で文章を流す
3.戸惑う(SNSから離脱する、読むだけにする)

SNS上で活発に活動している人は、
おおむね「1番」の選択肢をとっています。
仕事関係の人からtwitterでフォローされているということを、
とりあえずいったん忘れて、プライベートなことをつぶやいたりします。
ふつうそのことについて仕事関係の人からリアクションは来ないので、
忘れたまんまでいられます。

もちろん、仕事関係の人に決してバレないようにしながら
プライベートな発信を続けるという方法もあります。
現にFacebookでは「制限」というものがあって、
このリストに入れると、他人と同じあつかいになります。
要するに、「友達まで公開」が見れないようになる。
形式上は「フレンド」だけど実情は他人という、
なんともせつない状況が誕生します。

そういう方法をとらないかぎりは、
1番か2番の選択肢を選ぶことになります。

「2番」は、とくに芸能人などの公人がとるものです。
一見プライベートなことも発信しながらも、
決してディープなところまでいかない。
それはなんというか計算されたプライベートで、
グラビアアイドルの水着です。恥部は見せない。
どちらかといえばこちらの方が賢いです。
恥部を見せたければ実際に会って見せればいいのであって、
SNSというオープンな場所で見せるのは猥褻物陳列罪である、
というロジックもアリですから。

ただ、それでは結局なんのためにSNSをやっているのか、
ということに関連していくので、1番と2番のどちらがよいかは、
その人が「SNS」を何のためのものととらえているか、
によるでしょう。そら人それぞれです。

「3番」はある意味もっとも典型的です。
Facebookの友人を見たら138人いましたが、
そのうちアクティブユーザーは20人ぐらいです。
適当にアクティブユーザーという横文字を使っていますが、
要するに定期的に何かしら書き込みをする人間です。
(本来は、「定期的に利用している人間」ぐらいの意味)

本来、多様なグループと多様な文脈でつきあっている人間が、
その全員に通用する文章を書けといわれても、
たぶん書くことができません。僕も書けません。
何かしら1つの文脈を選択して書かざるをえず、
その文脈に慣れ親しんでいない人間からすると、
「あいつはこういうことも書くのか」という風になります。
それがリアルな付き合いに全く影響を与えないってことは無くて、
何かしら微妙な恥ずかしさが生まれると思います。
例えば伊集院光さんはラジオですごい下ネタを言ってますが、
ふだんの生活では、そのことについては触れられない、
でも下ネタを言ってること自体は認識されている、
ということの恥ずかしさ、みたいなのはたぶんあって。
我々も擬似的にそういう「芸能人」状態になります。

そうならないためには、SNSでは何も書かないというのも、
これまた1つのよい戦略です。

その「あいつはこういうことも書くのか」感というのが、
SNSのもっとも面白い部分なのではないか、
という風にも考えていますが。
代償は何かしらあるけれど。

――――――――――――――――――――――――――――

「ザッカーバーグは二次元に住んでいる」
ということを書きましたが、
これは、もしかしたらFacebookが我々の生活に浸透することで、
二次元的な人間が登場するのではないか、ということです。
アニメ・マンガ好きということではなくて。

つまり、「私」という単一の人格があって、
それがただSNS上に存在しているだけなのだ、という考え方。
これが二次元的な考え方です。

いっぽうで、「私」というのが柔軟に変化し、
その様々な側面がSNSに現れては消える、という考え方もあって、
これは三次元的です。ある意味ではn次元ともいえます。

で、もしかしたらFacebookが想定している人間像というのが、
有機的でおぼろげな後者のものではなくて、
無機的ではっきりした前者の人間像なのではないか、
という危惧が、なんとなくあるんですね。どっかに。

もちろんユーザー側にはそんな思いはないし、
自分の人格は時と場合によって変化する、というのは、
よくわかっていると思うんですが、
でもそうではないモデルを基準に設計されている可能性があって。
そこのとこの認識のズレってのが、
ひょっとしたら大きな問題になるかもしれない。

たとえば、全く見られるつもりがない「近況」が
うっかり「近況」として報告されてしまう、という問題は、
今すでに起きています。
誰かが写真に自分をタグ付けしたならば、
それは自分が見ていないとこでも「近況」として報告されますから、
「別の顔」というのが意図せずバレるわけです。
そういうもののコントロールは、
本人の手できちんと管理できた方がいいのですが、
「仕事のまじめな顔も、飲み会のときのだらしない顔も
 同じ自分だからいいではないか、何が困るのか」という前提が
組み込まれていると思います。

にしても、ひとむかし前(5年、10年前)であれば、
ネット上に自分の顔写真が流出するというのは、
相当避けたい事態だったはずです。
それが今では、ご丁寧にタグ付けまでされて流出しているのは、
かなり不思議。なぜ顔バレしてもいいようになったのか。

これもひとえに「忘れる」ということに起因していると思いますが、
「忘れる」というのはそんなによい解決策ではない。
とはいえ、一般人が芸能人化したと思えば、
顔バレすることや、プライベートがバレることも、
そんなにたいしたリスクではないのかも。

――――――――――――――――――――――――――――

で、もしそういった二次元的な人間像が、
Facebook等のSNSによって促進されるとしたら、
それはちょっと不幸なことかもしれない。

二次元的な人間像というのは、
結局のところ、「どこから見ても非の打ちどころがない人間像」を
目指さざるをえないからです。
それは決して到達できない目標なので、
それを前提として組み込まれるゲームは、
必然的に参加者が疲弊するのではないかと思います。

そういった二次元的なふるまいでもなく、
かといって「ある一部の人々以外の存在を忘れる」という
ふるまいでもなく、
なんというか「パブリックなふるまい」のようなものを
身につける手助けができたら、
それは社会にとって非常によいSNSだと思うのです。
パブリックといっても、「会社にいるときの自分」とか
そういうことではなく、「いろんな人の前での自分」という意味で。

――――――――――――――――――――――――――――

さっき内田樹さんの本(『呪いの時代』)を読んだばっかりなので、
非常に文体がそれっぽくなっています。若干違うけれど。

広告

0 Responses to “ザッカーバーグは二次元に住んでいる”



  1. コメントする

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中





%d人のブロガーが「いいね」をつけました。