どこまでもアウェー

今日西宮のほうでライブしてきたんですけども、
そこでの経験があまりにもアウェーだったので勉強になりました。

場所は、関学前の喫茶店。
といっても通常営業ではなく、関西学院大学の学園祭、
新月祭にあわせて、それ用の営業になっています。
中で出店が出ていますし(馬から落馬みたいな表現ですが)、
ライブスペースがあって、1日中誰かしらがライブしています。
30分ごとに交代、みたいな感じでね。

で、私もその中の1人として今日出演してきました。
出演時間は11:30~12:00。トップバッターです。
しかもソロです。

あとあと思えば、これはすさまじい悪条件でした。
トップバッターなので、
「○○のライブを見に来たついでに見てます」という人もいませんし、
お客さんの方が音楽を聴くテンションになっていない。朝だし。

でも私はいっぺんそういうどアウェーな舞台に立ってみたかったので、
結果としてはまあ満足なんですけども。

ソロってのがまた悪条件でしたね。
ソロでテンションをあげていくのは難しい。
セッションの場合やってるうちに2人で盛り上がるので、
それにつられて「お、なんか楽しそう」とお客さんの方も思うんですが、
ソロの場合、自分がいきなりハイテンションにならなきゃいけない。
しかし朝だし。逆に温度差を感じるのもいやだし。

会場に11時からちょっと遅れて入り、準備。
会場で出迎えてくれたスタッフの方々はとてもいい人でしたが、
いかんせん客(というかそこにいる人)が少ない。
どのくらい少ないかというと、片手で数えられるレベルである。

「あれ、これ大丈夫かなあ」とは思ったものの、
ライブをやらないわけにはいかないので、
粛々と準備をすすめる。

なにげに、マイクを通しての舞台はひさしぶりなので、
PA装置があることに少しテンションがあがる。
しかも今回は特別な機材がある。
BOSS RC-50 ループステーションだ。

ループステーションというのは、その名の通りループマシンで、
自分の演奏をループさせることができる。
つまり、まず先にベースのリズムだけ作って、
それを機械に演奏させつづける。
その上で自由にメロディアスな演奏をする、ということができるわけ。

それだけでなく、ベースにいくらでも凝ることができる。
たいていのループマシンは多重録音ができるので、
たとえばベースラインを、
「ダラブッカ+トンバク+カリンバ+カンジーラ+アサラト」で
作ることもできるわけだ。
これだけ複雑なことができたら可能性はまさしく無限大。
ひとりオーケストラである。

とはいえ、このループマシン、木曜にある親切なお方から借りたばかりなので、
あつかいに慣れていない。ものすごく慣れていない。
どのぐらい慣れていないかというと、
ライブするまでにこれを3時間ぐらいしか触っていない。
たぶん機材を使うタイプの人からすれば当たり前なのですが、
3時間しか使っていない機材をライブで当日使うというのは、
かなりのギャンブルだ。

当然トラブります。

しかしまあ、ライブが始まるまではそんなことは考えず、
なんとかなるだろうと思った。即興演奏家の悪い癖である。

ライブ前に想定していたのは4曲だった。

1曲、まず陶器ダラブッカで即興演奏。
陶器ダラブッカは相当多才で派手な楽器なので、これでグッと心をつかむ。

2曲目、ループマシンを使って、
カリンバやアサラトを合成して少しアフリカンなループミュージックを作る。
これでポップさとキャッチーさを担保。

3曲目、トンバクで短めの即興演奏。
ダラブッカとの違いを楽しんでもらう。

4曲目、ループマシンをふたたび利用して、
今度は全部の楽器でひとつのリズムを作ってみる。

今見ても、なかなかよさげなライブプログラムである。
少なくとも俺が観客なら見たい。

ライブが始まった。

・・・客が少ない。
5±2人ぐらいである。

しかも、その全員が、ライブを見に来ているわけではなく、
カフェのめしやドリンクのために来ている様子である。

いや、まあでも、ここでダラブッカの素晴らしい演奏をすれば、
たちまちその音は衆人の耳目を集め、興味津々で聴いてくれることであろう。

そう思って意気込んで演奏する。

が、しかし。

反応がない。

よく学校の先生などが「壁に向かって話しているようだ」なんて愚痴ったりするが、
あの気持ちが少しわかった。

もちろんみんな聞いていないわけではないのだが、
聴いてはいない。耳を傾けてはいない。

あ、でも1人ぐらいちょっとこちらを注視している人がいたので、
あの人は聴いてくれたのかもしれない。

ともかく、リアクションがまあない。
はたしてこのまま演奏を続けていいのか。
もうちょっと何かキャッチーなことをやるべきか。

そう思って、多少派手なフレーズを入れてみたり、
4拍子系でポップスぽいリズムをやったりする。しかし反応がない。

ええ~~~~~。

反応がねええ~~。

「これがアウェーか!」

人生史上僕がもっともアウェーだった日である。

京都という土地は、なんやかんやで民族音楽の素養があるので、
来てくれるお客さんは、だいたいモチベーションが高いです。
民族音楽としてひとくくりにするのはもちろんアレなんですが、
なんというか、「変わった音楽を聴きてえ!」ということに対して、
京都は人一倍モチベーションが高いのではないかと思います。
もしくは、そういうお客さんが集まってきてくれやすいのか。

ところがここは、兵庫県西宮市である。
俺以外の出演者はみなピアノとかギターとか、
あるいはジャズバンドだったりして、ポップでキャッチーである。
そういう音楽を聴きに来ている人に対して、
こういう音楽をお聴かせするのはいかがなものか。
うどん屋に入ってきた客に天下一品のラーメンを出すような行為である。
たしかにこってり好きにはよろしいが、
もう少し俺はあっさり味を出すべきだったのではないか。
いや、もちろん俺が好きなのはこってり味なのですが。

このへんの、演奏者と客の関係みたいなのは、
まあ勉強になりましたね。どのへんまで客を意識すべきなのか。
客席の反応を意識すべきではあるけれど、
意識しすぎると委縮してよい演奏ができなくなるのではないか。

とはいえ、これは民族音楽だから、という話ではなく、
例えば俺がソロじゃなくて、しろうとロックバンドだったとしても、
たぶん同じような話だったと思います。
まったく俺に対する関心がない状況でどう引きつけるのか。

これがまた、ジャズバンドです、とかいうことになれば、
ちょっと感じは違ったかもしれませんね。
その場合、状況に非常にマッチしているから。
お客さんはそういう音楽を聴きに来ているし、
我々もそういう音楽を演奏するわけですから。

そう考えるとまあ、ミュージックフェスタには、
ある程度の統一感はやっぱいるんだなと思います。

とはいえ、例えばロックフェスとか京都音博とかは、
何人かかなり別ジャンル(HIPHOPや演歌)の人が出たりするんですが、
あれはあれで結構なじんでたりするんですよね。
あれはなんなんでしょうね。

まあでも、たとえばあの関学前のカフェに、
1人民族音楽好きが前の方で座って聴いてくれているだけでも、
ずいぶんと精神的なラクさは違ったかもしれない。

いや、どうでしょうね。民族音楽好きとかじゃなくて、
単に知ってる人が座ってるだけでもちがうでしょうな。

まあそれはともかく。

陶器ダラブッカのソロをやってもまったくウケない。

これはどうしようかなあ。

「どうしようかなあ」と思いながらも演奏できるのが
即興演奏のいいところですが、そればかりもしていられない。

よし、ダラブッカの演奏を少し早めに切り上げて、
ループマシンを使った2曲目にうつろう。

ここでよくなかった(かもしれない)のが、
「どうせ誰も聴いてねえなこれは」と思って、
1曲目終わりましたよー、みたいなことを言わなかったんですね。
これ、もしかしたら言っといたほうがよかったのかもしれない。

とはいえ誰も聞いていない空間にむかって喋るのはやはり苦痛なので、
(そう考えると学校の先生はえらい)
MCなしで2曲目、ループマシンに移行。ひっそりと。

結果として、このループマシンが、
けっこう使えました。

もちろん、思っていた通りにループしてくれないなどのエラーはありましたが、
それでも1人で即興演奏していた時に比べればだいぶラクです。
擬似的に「1人じゃない」と思える。(Jポップの歌詞みたいですねこれ)

あと、いろいろな楽器を使えるのでやってる方も楽しいし、
ループマシンの「停止」→「再生」とかやると、
カンタンにブレイクっぽいのが作れるので。
けっこう助かりますよ。

あと、適当にやったフレーズが思わぬ組み合わせの妙で輝いたりするんで、
「あれ、これ今すごいいいグルーヴ生まれてるんじゃね?」
という状態は何回かありました。それはすごくよかった。
客観的な耳などというのはないんですが、
客観的に聴いてもなかなかポップだったし。

「ループでおもしろい組み合わせを作る作業」に熱中すると、
なんか客席の反応はあんまり気になりませんでした。
というか、むしろないのが自然であって、
俺はDJなのだ、という感覚になんとなくなりました。
つまりBGMに徹するというか。
BGMなら客席の反応が薄いのもしかたない。
そのかわり最高のBGMになってみようという態度で、
なんかいろいろ実験的なことをやってみてました。

結果うまくいったかどうかわからんのですが、
少なくとも勉強にはなりましたし、
それなりにおもしろい音楽ができてたと思います。

ただまあ当初の予定とはぜんっぜん違いますし、
もはや「民族音楽、とりわけ打楽器の魅力を伝える」
みたいな目的はどっかにいってたんですが。

言い忘れてましたが、このイベントノーギャラなので、
交通費を考えると単純に出費なんです。
ただ、ダラブッカ・トンバクの宣伝とか、あるいは、
そういうアウェーでの経験をするのはおもしろそうだなと思って、
奇妙なご縁(twitterつながり)に乗っかって
出演したんですけども。

ダラブッカの宣伝になったかどうかは分からんのですが、
アウェーでの経験はそーとー勉強になりました。

あと、ノーギャラだと思ったら昼めし(スタミナ丼)がもらえました。
なんか地味にうれしかった。
吉本の芸人が初ギャラ500円、みたいな話を思い出す。

芸人さんてのも、営業などでは超アウェーな現場に出るわけで、
それでも自分のテンションを上げてちゃんとネタをやりきるんですから、
その精神力はすごいっす。
おもしろいおもしろくない以前にそこはすごい。

あと、無名のロックバンドとかいうのも、
けっきょくは同じことをやっているのかなあと思いました。
みんなこういう現場からスタートしたのかもしれん。

とはいえ、ホームで闘っているからラクだ、ということではなく、
ホームはホームで、耳の肥えたお客さんがいますしね。
「ホームを拡大する」というタイプの戦略もあります。

あとまあ、伝統芸能的なものがポップ性を追求しすぎても、
それはそれで本来のあり方を崩すことになりかねないので。
両立する範囲で、アウェーで戦えるのがいい。
やっぱりピラミッドスはすごい。

我々のダラブッカグループも、
そういう感じになりたいものです。
次回ライブは11/18。

広告

0 Responses to “どこまでもアウェー”



  1. コメントする

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中





%d人のブロガーが「いいね」をつけました。