実体とシグナル

以前の『スキルの可視化』の話と関連するんですが、
世の中には以下の4つの状態があるのかなと考えています。

・実体があり、シグナルがある
・実体がなく、シグナルがある
・実体があるが、シグナルがない
・実体もなく、シグナルもない

ここでのシグナル=「目に見えるもの」です。
「目に見えるもの」と言ってしまうと例えば音楽や料理の味、あるいは香水の調合などは
どうなんだという風になってしまうのですが、それは一旦置いておきます。

で、例えば具体的に表すとこういう感じになります。

・火が燃えていて、煙が上がっている
・火は燃えていないけど、煙は上がっている(=ドライアイスとか?)
・火は燃えているが、煙は上がっていない(=換気が効いているのかもしれない)
・火も燃えていないし、煙もない(=何もない)

このようにいろんな可能性はありますが、
通常我々が煙を見たら「あ!火が燃えてる!」と思う(=煙を火のシグナルとして捉える)のは、
「煙」という項目と「火」という項目の関連性が強い、因果関係があるからです。
逆に言うと我々が「火」と「煙」の間に関係を見出していなければ、そもそもこういう考え自体が成立しない。

例えば全く無関係のものを並べてみます。

・ベルが鳴り、食事が出る
・ベルが鳴ったが、食事が出ない
・ベルは鳴らないが、食事が出る
・何もない

「ベル」と「食事」は全く無関係のものです。
でも、こういった無関係のものも、パブロフの実験の通り、
何回も繰り返してやっていくことで関連性が構築されていき、
あたかも「実体」と「シグナル」のような関係になることができる。

ということを考えていった時に、「シグナル」が「シグナル」として成立するためには、
「シグナル」と「実体」の関係性が強い、ということが一つの条件だなと思ったのです。

でも本当にそれだけか?というと、もう一つ実は条件があるのかもしれず、
それが『「シグナルだけを偽造することが難しい」という概念がみんなの間に共有されていること』
なのではないかな〜〜ということを考えています。

例えば「A」という実体に関連した「B」というシグナルがあったとしても、
その「B」というシグナルを誰でも作り出せるのであれば、
相対的に見たときに「B」と「A」の関連性が弱くなるんですね。

例えば「B」というシグナルが一切偽造不可能であり、
「B」が感知される場合は必ず「A」であるという場合は、

「B」→「A」:100%
「B」→「not A」:0%

という関係性が成立するわけですが、
これが仮に「B」がいくらでも偽造可能であった場合には
「B」→「not A」の割合が増えていってしまう。
その結果もしかしたら

「B」→「A」:10%
「B」→「not A」:90%

ぐらいになってしまうかもしれない。

なんだか抽象的な話になりましたが、例えばわかりやすい例でいうと、
ロゴマークというものはまさにその最たる例ですね。

このロゴマークが付いているということは、あのメーカーの商品であると分かる。
逆に誰でもそのロゴマークを付けて良い場合、あのメーカーかもしれないし別のメーカーかもしれない。
結果そのロゴマークに対して信頼性がなくなり、意味が失われる。
それゆえに、ロゴマークを偽造・偽称した場合は罰されるようになっている。
そういう仕組みになっている。

「お金」なんかも偽造したら罰されるのでいい例に思えますが、
しかし「お金」の「実体」ってなんなんだ?というとこれは鬼難しい問題になってきて、
そもそも「お金」は「シグナル」だけをやり取りしている状態なのではないか、
という風にも思えてきて、これはこれで考え出すと面白いのですが超長くなるので割愛します。

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ここまでは比較的シンプルな前提に基づいた話でしたが、
実際の世界だともうちょっとややこしいことになります。

例えば『なぜ一流の男の腹は出ていないのか?』という本がありますが、
これを「実体」と「シグナル」の関係に分けると以下のようになります。

・一流の男であり、腹は出ていない
・一流の男ではないが、腹は出ていない
・一流の男だけど、腹は出ている
・一流の男でもないし、腹も出ている(ショボン)

で、まあぶっちゃけた話、多分一流の男だけど腹が出ている人とかいると思うんですよ。というか会社にいます。
いいものも食べていますし、忙しいでしょうし。それはしょうがない。

あるいは「腹が出ていないことが一流の男であることの条件だ」という場合は、
そもそも「なぜ一流の男の腹は出ていないのか?」と問いかけることが無意味なので
(「なぜ腹が出ていない男の腹は出ていないのか?」という同義反復になってしまう)
そういう方向に持っていくことは許されない。

となると、例えばの話こういう確率論になってくると思うんです。

・一流の男であり、腹は出ていない確率:80%
・一流の男だけど、腹は出ている確率:20%

で、こう言う確率があって尚且つ

・一流の男ではないが、腹は出ていない確率:40%
・一流の男でもないし、腹も出ている確率:60%

ぐらいであったときに初めて成立するのではないかと。
これが逆に

・一流の男ではないが、腹は出ていない確率:90%
・一流の男でもないし、腹も出ている確率:10%

とかだったらむしろ腹が出てた方が一流なんじゃない?ぐらいになってくる。
実際インドとかでは太っていた方が金持ちと見られるようですし。

例えば一流でない男(男性に限定した話です)が9900人いて、
一流の男が100人しかいない場合に、先ほどの確率(痩せ40%-肥満60%)で計算すると、
それぞれ以下のような人数になります。(表記をちょっと省略しました)

一流かつ痩せ:80人
一流かつ肥満:20人
非一流かつ痩せ:3960人
非一流かつ肥満:5940人

で、この時に「痩せている」というシグナルを持っていた場合に、
一流である確率は何%なのか、というと、たったの2%です。
「太っていた」というシグナルを持っていた場合には0.3%なので、
確かにそれよりは6倍ぐらい確率は高いのですが、でもシグナルとしては大して使えないレベルです。

つまり「一流の男はなぜ腹が出ていないのか?」ではあるかもしれないが、
「腹が出ていない男は一流なのか?」に関してはNOと言わざるを得ない。
痩せたからといってそれはあくまで痩せただけです。いや、それはいいことなんでしょうけどね。

となるともっと絶対的なシグナル、それがあればかなりの高確率で判定できるようなもの、
が必要なのですが、絶対的なシグナルに近づいていくほど、「実体」と「シグナル」がほぼ一致してしまう。
あるいはそのシグナルを得るためのコストが増大してしまう。

例えば、その人が仕事が出来るかどうか、を知るためには、
やっぱり実際に働かせてみる(=ほぼ「実体」)のが一番良いのかなと思うのですが、
それにはやっぱりものすごいコストがかかります。

次点として、面接とかで話を聞く、課題を与える、などの方法で、
シグナルを得ることもできる。でもそれは「実体」より少しだけ離れたシグナルです。

さらに全員面接をするだけのコストもかけられないとなると、
これはもっと遠いシグナル、つまり書類審査とかで削らざるを得ない。でもコストはまだ低く済む。

「実体」と「シグナル」があくまで確率論的に結びついている時は、そういうトレードオフがある。

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話は変わりまして、昨日デイリーポータルZのライター、
地主恵亮さんの『リア充ナイト』というものに行ってきました。

地主恵亮さんといえばまあご存知の方もいると思うんですが、
彼女がいない時でも彼女がいるような写真を撮ったり、リア充っぽい写真を撮ったり、
そういったことに尋常でなく長けている人です。

で、昨日のイベントの主な内容としては、
いかにリア充でなくてもリア充っぽい写真を撮るかという話で、
それはとても面白かったのですが、これはつまり「実際にリア充になる(実体)」のではなく
「リア充っぽい雰囲気(シグナル)を作り出す」という作業なわけです。

でも、普通の人はそもそも「リア充っぽい雰囲気(シグナル)だけ作り出そう」とか思わない。
それをしても虚しくなりそうだし、して何の意味があるんだと思うし。
つまりそのシグナルは「偽造されない」ものだという観念ができている。
それをあえて「偽造」した。

そしてなぜかその行為はリア充に逆照射することができて、
むしろ「いわゆるリア充と呼ばれる人もシグナルを偽造しているだけなのでは?」
という風に考えることができる。

偽造まではいかなくても、生活の中での「リア充っぽいシーン」を切り取って、
SNSなどのメディアに掲載することによって、
あたかも日常的にそういう感じであるという演出を他人ないし自分に向けて行っている、
そういう面もあるんじゃないか?
つまりシグナルを作り出すのがうまいだけなのでは?

そう考えると例えば他人のリア充っぽい写真を見たところで、
それにやきもきしたりする必要は別にないんだぜ、というメッセージにも捉えられる。
(多分そんなことはなく、単に面白そうだからやってみたのではないかと思うけど)

シグナルだけを追いかけてしまうとそれは実体を置き去りにしてしまうから、
シグナルのルールが変わった時、そのシグナルが無効化されたときに対応できない。
自分が発しているシグナルには自覚的であるべきだけど、
追いかけるものはあくまで実体であるべきだなということを考えたりしました。

まだまだ考え続けていきたいテーマではありますね。

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